ガジュマル

観葉植物取扱説明書

ガジュマルの特徴

ガジュマルは幹の形がユニークで、ぷっくり膨れたり絡みあったりしているのが特徴です。観葉植物として人気がありますが、沖縄や屋久島で自生しているガジュマルは樹高20mもの巨木に成長します。

個性的な形の幹は、もともとは「気根」と呼ばれる根です。ガジュマルの種が鳥などに運ばれて他の樹木の枝などで発芽すると、そこから地面まで細い気根を伸ばします。成長しながら何本もの気根を出し、やがて気根は幹のように太くなり、複雑に絡まります。

ガジュマルの葉は、やや肉厚で丸みがあり、光沢のある鮮やかな緑が特徴です。

「タコの木」という別名は、このような複数の気根が幹のようになって絡みあうようすから来ています。園芸店では「多幸の木」という字を当てます。そこからさらに「幸福の木」とも呼ばれるようになりました。

ガジュマルの花言葉は「健康」です。何本もの気根を伸ばして、ときには岩の上でもたくましく成長する生命力から付けられた言葉でしょう。カンボジアの世界遺産アンコールワット遺跡群のひとつのタ・プローム遺跡が1860年に発見されたときは、寺院に絡みつくたくましいガジュマルの姿が世界中の話題になりました。

沖縄には、ガジュマルの古木にはキジムナ―という精霊が住む、という伝説があります。キジムナーは魚とりが上手で、キジムナーと仲良くなればいつでも魚を貰えて、金持ちになれるとされています。

 
 

ガジュマルの育て方

ガジュマルは生命力が強い樹木なので、鉢植えでも簡単に育てることができます。熱帯植物なので日光と高温を好みますが、いくつかの注意点を守れば、屋内でも丈夫に育ちます。
 

置き場所

日当たりの良い窓際に置くとよく育ちます。日光不足に耐える耐陰性があるので、あまり日光が入らない室内でも育てることができますが、その場合はときどき窓際に移すなどで日光浴させると健康を保つことができます。
日光浴させるときは「葉焼け」に注意しましょう。ふだん強い紫外線に当たっていない植物をいきなり直射日光に当てると、葉焼けして茶色になってしまいます。庭に出すなら半日陰の場所、窓際ならレースカーテン越しが適当です。
 

温度管理

ガジュマルは気温が5℃以上の環境が必要です。春から秋までは屋外でも管理できますが、冬の最低気温が5℃以下になることがある地方では、冬の間は屋内で管理しましょう。暖房を止めた後は冷気が伝わる窓際から離しておくようにします。
エアコンの風は植物の水分を奪うので、夏も冬もエアコンの風が当たる所には置かないようにしましょう。
 

水やり

春から夏の生育期は水やりの回数を多めにし、秋から冬の休眠期は少なめにします。
鉢の土は、いつも湿っていると病気の原因になり、いつも乾いていると枯れてしまいます。鉢土が湿ると乾くを適度に繰り返すことで、ガジュマルは健康に育ちます。
回数でいうと、夏は2日に1回、冬は1週間に1回がおおよその目安です。春・秋はその中間で、3~4日に1回が目安になります。ただし、部屋の温度や湿度によって違ってくるので「土が乾いたらやる」が本当の目安です。
とくに、気温が低く休眠期のガジュマルに水をやりすぎると根腐れの原因になります。表面の土が乾いても中はまだ湿っているので、表面が乾いてから3~4日後にやるくらいでちょうどです。
水やりをするときは、鉢底から水が出るまでたっぷりやるのがコツです。チョビチョビと少しずつ毎日のようにやっている人が多いので気をつけましょう。
 

葉水

霧吹きで葉に水をやると、葉のホコリが取れてきれいになり、ダニなどの虫も除去されます。
葉水のやり方は、風通しの良い場所で午前中にあげるのがコツです。夜間や、寒い時にあげて濡れたままにしておくと、葉にシミのような斑点ができることがあります。
鉢土を濡らさないように気をつけて、葉の表裏に霧吹きします。庭でシャワーをかける方法もあります。葉水は毎日でもOKです。
 

肥料

ガジュマルはあまり肥料を必要としませんが、適度に与えることで生育が早まります。
もっとも簡単で失敗のない肥料のやり方は、粒状の緩効性肥料を使うことです。鉢土の上に置いておくだけで、水やりのたびに少しずつ溶けて、1~2カ月効き目が持続します。
置き肥は一ヶ所に固めて置かないで、決められた量をばらけるように置きましょう。固めて置くとその下の根だけ肥料分過多で傷みます。
 

植え替え

ガジュマルが育ってきたら、一回り大きな鉢に植え替えましょう。植え替え用の土(用土)は、園芸店で観葉植物用の水はけのよい土を購入すれば間違いありません。
小さな鉢のままにしておくと、根詰まりを起こすので3~4年に1回は植え替えが必要です。鉢底の穴から根が何本も出ているのが根詰まりのサインです。植え替え時期は、生育期に入った5~7月が適当です。
木をあまり大きくせずに、小さいままで鑑賞したい場合も、植え替えは必要です。その場合は元の鉢を使用し、詰まっている根を間引くように切って、新しい土に植え替えます。
 

剪定

ガジュマルは成長が早く、葉が茂りやすいので、剪定して形を整えるのが大切です。剪定時期も成長期に入る5~7月がベストです。
ガジュマルは生命力が強いので、思い切った剪定が可能です。樹高を高くしたくないときは上に伸びた枝を切るなど、好きな形に、好きなところから切り揃えてかまいません。枝葉が密集している部分も間引くようにカットしましょう。
ガジュマルを剪定すると、切り口から白い樹液が出ます。人によってはかぶれる恐れあるので注意しましょう。
幹から気根が伸びてきますが、そのまま伸ばしてもよし、見栄えが悪いと思ったら根元から切ってもかまいません。
 
 

ガジュマルのよくあるトラブルと対処

丈夫で育てやすいのがガジュマルの特徴ですが、トラブルが生じることもあります。そんなときの対処法を説明します。
 

根腐れ

ガジュマルのトラブルでいちばん気をつけたいのが根腐れです。根詰まりして水はけが悪くなった状態で水をやりすぎると根腐れしすくなります。
「いったん土が乾いて空気を取り込んでから水をやる」というサイクルがこわれて、つねに根が水浸しになると、根が呼吸できないうえに、空気を嫌う細菌類が繁殖してダメージを与えるのです。

【原因】
・水のやりすぎ
・根詰まり
・水はけの悪い土
・肥料のやりすぎ

【症状】
・水をやっても鉢底からなかなか水が出てこない
・葉が茶色く変色する
・緑色の葉が落ちる
・土の表面にカビが生えたり、腐敗臭がする
・幹がフカフカして柔らかくなる

【対処法】
鉢から取り出して、根の周りの土をそっと取り除き、黒く変色した根や増えすぎた根を切り落とします。次に、新しい水はけのよい土に植え替えて、変色した枝葉を切り落とします。その後は、水を控えめにして、肥料をやらずに1ヵ月ほどようすを見ましょう。

根の全体が黒くなり、幹がブヨブヨになるほど根腐れが進行すると復活は難しいですが、そこまで行っていなければ元気を取り戻す可能性があります。
 

葉焼け

室内で育てていた植物を庭に出して、急激に強い直射日光を当てたときに生じるのが葉焼けです。紫外線で葉の葉緑素が破壊されて、白くなったり、茶色くなったりします。部屋の奥から窓際に移した場合も葉焼けすることがあります。
とくに屋外や窓際に移して3~4日間は、植物が強い紫外線に慣れていないので、葉焼けを起こしやすくなります。庭なら半日陰、窓際ならレースのカーテン越しに置いて、ショックをやわらげてあげましょう。
葉焼けを起こした葉は元に戻らないので、カットします。
 

ハダニ

観葉植物の虫害でもっとも多いのがハダニです。肉眼では赤い粉のように見えるハダニは風にのってどこからともなくやってきて、気づかないうちに葉を食害します。

【症状】
・葉にクモの巣のような糸がからみつく
・葉にポッポッと斑点ができる
・葉の緑色が薄くなる
・葉の裏に赤い粉粒のような虫がついている

【対策】
葉水をしてついたダニを洗い流しましょう。葉が茂りすぎていると葉水が届かないので、混みあっている葉を剪定することも大切です。
 

葉落ち

ガジュマルは常緑樹ですが、生育環境が悪くストレスを感じると葉を落としてしまうことがあります。
水のやりすぎや不足、日照不足、温度管理、エアコンの風など、ここまで述べたどの注意点も葉落ちの原因になります。
その中でも、とくに葉落ちの原因になりやすいのが5℃以下の低温です。冬の夜間は窓際の鉢を温かい場所に移すなどで、5℃以上の環境を保ちましょう。
葉落ちしても枯れてしまったわけではありません。すべて葉を落として丸坊主になっても、根腐れを起こしていないかぎり、春にはまた枝葉が伸びてくるので、あきらめないでようすを見ましょう。

 
 

ガジュマルのまとめ

ガジュマルは生命力が強い植物なので、少しのお世話で誰でも簡単に育てることができます。

いちばん注意したいのは、可愛がりすぎて水をやりすぎないことです。根をいつも水浸しにしておくと、致命的なトラブルである根腐れを起こしやすくなります。鉢土が乾いて空気を取り込んだタイミングで水やりをすることを忘れないようにしましょう。